「よみがえる」を漢字に変換すると「蘇る」と「甦る」が出てきます。
…どっちを使うべき???
ちなみに、似た意味の「そせい」を漢字変換すると…
「蘇生」と「甦生」が…?
これって、どっちを使うべきなのでしょう??
それに、「黄泉がえり(よみがえり)」という映画がありましたよね?
なんで「黄泉」なの??
ということで、今回は「蘇る」と「甦る」の意味の違いや使い分け、語源などについて調べてみました。
1.「蘇る」と「甦る」の使い分けは?ポイント解説!
「蘇る」と「甦る」は、辞書などによると、どちらも意味は同じで違いはありません。
・命が絶えた者、命が絶えそうな者が復活すること。
・生物以外のものが衰えた状態から復活すること。
生物が生き返る場合は「蘇る」で、生物以外のものが復活する場合は「甦る」、といった説がありますが、その裏付けはありませんでした。
それでは、その調査結果について詳しく説明していきます。
2.「蘇る」と「甦る」の意味とは!
さまざまな書籍を調べましたが、書籍の上では「蘇る」と「甦る」の使い分けに関する記述はありませんでした。
ですから「蘇る」と「甦る」は、基本的に意味は同じです。
まずは、書籍上の「蘇る」と「甦る」の意味から詳しく説明します。
①一度しんだ者やしにかけた者が息を吹き返す。生き返る。
②一度衰えたものが再び以前の力や状態を取りもどす。「記憶が―」
とういことで、「蘇る/甦る」には意味が2種類あります。
まず、意味の①から。
この①の「蘇る/甦る」は、主に生物を対象とした言葉で、命が絶えた者、また命が絶えそうになった者が復活するという意味です。
つまり、息絶えた状態、息絶えそうな状態から生き返るということですね。
たとえば、「しばらく動かずもうダメかと思っていたカブトムシが、なぜか蘇る(甦る)」といった使い方をします。
続いて、意味の②です。
この②の「蘇る/甦る」は、主に生物以外を対象とした言葉で、衰えた状態から復活するという意味です。
たとえば、以下のような使い方をします。
「事故により記憶を失った状態だったが、たった今全ての記憶が蘇った(甦った)」
この場合の「蘇る/甦る」の対象は、生物ではなく「記憶」です。
また、その対象が「映画館」になると下のような使い方をします。
「お客さまの数が徐々に増えたことで、つぶれそうな映画館が奇跡的に蘇える(甦る)」
3.「蘇る」と「甦る」の語源と漢字の成り立ちから考える使い分け!
①「蘇る」と「甦る」の語源!
最初に、「よみがえる」の語源から解説します。
「よみがえる」は「よみの国から帰る」が語源になっています。
では、「よみの国」とは何か?
「よみの国」とは、命が絶えた人が行く「あの世」のことです。
そしてこの「よみ」は、元々「闇(やみ)」という言葉がもとになっていたそうです。
それが、「黄泉の国(よみのくに)」へと変化しました。
「黄泉(こうせん)」は中国から伝わった言葉で、「黄」が「土」の意味で、「泉」が「水」の意味があります。
つまり、黄色い土の地下を深く掘ることで、地下水が出るわけです。
その深さの地下に「あの世」が存在すると考えられていたのですね。
この「黄泉の国から帰る」が「よみがえる」となりました。
その後「よみがえる」は、「蘇る」という漢字表記が生まれました。
その後に「甦る」という漢字表記があらわれたということです。
②「蘇る」と「甦る」の漢字の成り立ち!
多い説は、「生物が生き返る」場合は「蘇る」で、「生物以外が復活」の場合は「甦る」であるという説です。
これは、「蘇る」が最初にできた漢字であるということが1つ。
そしてもう1つは、「甦る」は「更」「生」が合わさった字なので、「更生する」という意味合いが強いという理由からです。
たしかに「更生」は、「立ち直る」という意味合いの方が強いですからね。
ですが一方の「蘇る」は、「シソの葉」の「紫蘇(シソ)」の「蘇」です。
「蘇」は、くさかんむりに、「魚」という字と、稲を意味する「禾」でできています。
本来の「蘇」の意味は、魚や野菜や穀物などを収穫するといった意味が元になってできた字なのです。
そして「そ」という読みがあることから、「遡及」の「遡」、つまり「さかのぼる」といった意味のある「遡」と入りまじってしまったのですね。
ですから、「蘇」は「さかのぼる」から「生き返る」という意味になりました。
ここで一旦整理しますね。
「蘇」は「さかのぼる」という意味が元になっています。
「甦」は「更生する」という意味が元になっています。
ちなみに、「更生」の意味は「立ち直る」のほかに「生き返る」という意味もあります。
ということで、私なりの結論です。
「さかのぼる」は、生物も対象になりますし、生物以外も対象になります。
「更生」は、「立ち直る」という意味もありますし、「生き返る」という意味もあります。
つまり、「蘇る」も「甦る」もどちらも生物が復活するという意味で使えるということです。
また、どちらも生物以外の復活にも使えるということですね。
ですから、「そせい」という字も「蘇生」と「甦生」、両方存在します。
4.「蘇る」と「甦る」!どちらも公文書では使えない?
実は「蘇る」と「甦る」の「蘇」と「甦」は、常用漢字ではありません。
常用漢字表に載っていないということは、使ってはいけないということではありません。
ですから、使っても何も問題はないのです。
しかし、公的な文書などでは基本的に使いません。
ですから、法律や役所などで作成する文書には使ってないのですね。
それにあわせて、新聞やテレビなどの報道機関でも使ってないのです。
つまり、新聞などで「生物が生き返る」「生物以外が復活する」という意味で「よみがえる」を使用する場合は漢字ではなく全てひらがなになります。
しかしです、なぜか「蘇生」や「甦生」の方は普通に新聞記事に使用しています。
「そせい」は漢字の方がピンとくる、ということなのでしょうか…。
まとめ
以上が、「蘇る」と「甦る」の意味の違いや使い分けについてでした。
「蘇る」と「甦る」は、公式な辞書ではどちらも意味は同じで違いはありません。
どちらも、命が絶えた者、命が絶えそうな者が復活するという意味です。
また、生物以外が衰えた状態から復活するといった意味もあります。
生物が生き返る場合は「蘇る」で、生物以外が復活する場合は「甦る」、といった説がありますが、その裏付けはありませんでした。
「更生」の説明をしましたが、「更正」と「更生」の違いについては下の関連記事をご覧ください。