「公平」と「公正」は、ときどき「公平公正」と二つの言葉を合わせて使われます。
また、それにあわせて「中立」も「公平中立」や「公正中立」といったように、よく合わせて使われますよね。
そんなこともあり、「公平」と「公正」と「中立」のそれぞれの意味が今一つわかりにくいのですね。
それに「平等」が加わると、さらにわかりにくくなります。
ということで今回は、「公平」「公正」「中立」「平等」の意味の違いなどについて調べてみました。
1.「公平」と「公正」と「中立」の意味の違いと使い分けは?
まずは、それぞれの意味を広辞苑で調べてみましょう。
・かたよらず、えこひいきのないこと。
【公正】
①公平で邪曲のないこと。
②明白で正しいこと。
【中立】
①いずれにもかたよらずに中正の立場をとること。
②いずれにも味方せず、いずれにも敵対しないこと。
(以下省略)
それでは、それぞれの意味をわかりやすく解説しますね。
最初は「公平」と「公正」の違いから。
①「公平」と「公正」の違い!
「公平に扱う」場合と「公正に扱う」場合、その対象者の人数に違いがあります。
・公平:必ず2人以上
・公正:1人または複数
※「人」は「団体」「組織」の場合もあります。
つまり、「公平」は2人以上の人々に対してかたよった扱いはしないということ。
「公正」は、1人であっても複数であっても正しい扱いをするということです。
アルバイトをしたら時給が100円だった場合、これは公正ではありません。
今の時代に時給100円はあまりにも安すぎます。
しかし、アルバイト従業員全員の時給が100円だった場合は、「公正」ではないのですが「公平」です。
それから、広辞苑の「公正」の意味の中に「公平で」とありますので、「公正」の条件は必ず「公平」でなくてはいけません。
アルバイトをしたら時給が1500円だった。
これは一見、公正です。
しかし、一緒に採用されたもう一人の従業員は社長の親戚という理由で時給が3000円だった。
これは、公平ではありませんので、1500円と公正に見える時給であっても公正ではありません。
わかりやすくまとめると、「公正」は対象者に対して、「正しく」しかも「かたより」や「ひいき」なく対応すること。
そして「公平」は、「かたより」や「ひいき」がなく対応することですが、必ずしも「公正」でなくてもよいということです。
②「公平」と「中立」の違い!
「公平」と「中立」場合、その対象者の人数に両者の違いはありません。
・公平:必ず2人以上
・中立:必ず2人以上
※「人」は「団体」「組織」の場合もあります。
「公正」は2人以上の人々に対してかたよった扱いはしないということ。
たとえば、異なる意見があった場合、両方の意見を尊重し対等な扱いをするということです。
「中立」は、2人以上の人々に対してかたよらず誰の味方にもならないことです。
つまり、異なる意見があった場合、両方の意見を受け入れず、どちらの側にも立たないということ。
具体的な例で説明します。
従業員50名のグループAは職場にシャワールームがほしいと希望しました。
もう一方の従業員50名のグループBは職場に更衣室がほしいと希望しました。
シャワールームも更衣室も100万円の費用が必要で、両方で200万円かかります。
責任者がシャワールームと更衣室の両方を設置するのが「公平」です。
しかし、予算が100万円しかなく、でどちらか一方を選ばなくてはならない状況だった場合。
責任者は、どちらの味方もせずシャワールームと更衣室の両方の設置を断念するのが「中立」です。
言葉の意味だけで、「公平」と「中立」の違いを説明するならばこのような感じです。
ですが、この具体例でおかしなことに気付きませんか?
要するに、以下のような疑問ですね。
「シャワールーム」と「更衣室」の両方設置という「公平」は、どちらの意見も尊重しているのですが、どちらにもかたよってなく味方にもなっていないので、「中立」でもあるのではないか?
また「シャワールーム」と「更衣室」、両方設置しないという「中立」は、どちらの意見も尊重していないが、どちらにもかたよることなく対等な扱いをしているので「公平」でもあるのではないか?
そうです、「公平」と「中立」は物事の結果を、大きく外側から見ると同じような意味になります。
ですが、「公平」と「中立」の違いは、両者をかたよることなく扱うのが「公平」、どちらの味方にもならないのが「中立」です。
物事全体の結果を見るのではなく、狭い部分で「かたよらない公平」と「誰の味方でもない中立」の違いといったように理解してください。
2.「平等」とは?「公平」との意味の違いは?
それから、「公平」と「平等」の意味の違いもまぎらわしいですよね。
では、「平等」を広辞苑で調べてみます。
・かたよりや差別がなく、すべてのものが一様で等しいこと。
「公平」はかたよらずえこひいきのないことで、「平等」はかたよりや差別なく一様で等しいこと…。
この広辞苑の解説だけでは、「公平」と「平等」は同じように思えますよね。
わかりやすく説明すると、「平等」の方は「一様」「等しい」とありますがこれがポイントです。
要するに、「平等」は全て同じでなくてはいけません。
具体例で説明します。
AとBの2人の従業員がいて、どちらも日給が1万円です。
Aは、常に考えて仕事をこなしており、1人で従業員2人分の利益を生み出しました。
一方のBは、まじめに仕事をせず、従業員1人分の半分の利益しか生み出すことはできませんでした。
AとBの2人、両方とも日給1万円ずつ支払うのが「平等」です。
ですが、会社がAの功績を評価して日給を2万円、Bの日給は5000円支払うのが「公平」です。
「平等」と「公平」の違いを説明する上でわかりやすいのが「共産主義」と「資本主義」です。
個人の能力や努力、成果に関係なくみんな同じ給料をもらえるのが「平等」です。
つまり、一生懸命に成果をあげようが、仕事をダラダラやろうが全ての人が同じ給料、これが「共産主義」です。
全員に働く場や評価される機会が均等に与えられた上で、成果をあげた人が、成果をあげない人よりも高く評価され、多くの給料をもらうのは「公平」です。
給料が人によって違いますので「平等」ではありませんが、成果の対価としての給料が支払われていますので「公平」です。
「かたよる」という言葉で説明してきましたが、「かたよる」には「偏る」と「片寄る」の2種類の漢字があることをご存知でしたか?
下の関連記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
まとめ
以上が、「公平」「公正」「中立」と「平等」の意味の違いについてでした。
「公平」とはえこひいきのないこと、公平でなおかつある基準に照らして正しいのが「公正」です。
「中立」とは、どちらの味方にもならないことです。
そして「平等」とは、みんな同じという意味です。