社長や上司からいただく有難い教え、これを「くんじ」といいます。
でもこの「くんじ」、漢字が2種類あります。
「訓示」と「訓辞」ですね。
何となく同じような意味にみえるこの2つ。
実は違う意味であり、使い方に気を付けなくてはいけません!!
ということで、今回は「訓示」と「訓辞」の意味の違いや使い分けなどについて調べてみました。
1.「訓示」と「訓辞」の意味の違いと使い分けは?
①「訓示」と「訓辞」の意味の違い!
まずは、「訓示」と「訓辞」を広辞苑で調べてみます。
①教え示すこと。
②年齢・地位などの上の者が下の者に対して教え示すこと。また、その教え。
【訓辞】
・教えいましめる言葉。
「訓示」と「訓辞」どちらも「教える」という部分では同じです。
また、「教える」のは「心得」だったり、失敗をしないようにする「いましめ」だったり、様々です。
会社にたとえるなら、社長や会長が多くの従業員が集まった中で行う演説ですね。
「今年のわが社の方針は…、お客様のニーズを第一に…。」といった、言葉です。
ですが、「訓示」と「訓辞」の大きな違いは、「訓示」は「動詞」であり、「訓辞」は「名詞」であるということです。
広辞苑の意味をみていただくと、「訓示」は「教え示すこと」となっているのに対し、「訓辞」の方は「教えいましめる言葉」となっています。
つまり、「訓辞」の方は名詞ですので「言葉そのもの」のことであり、「訓辞する」といった動詞のような使い方はしません。
そして、「訓示」は動詞で「教え示すという行為」であり、サ変動詞で「訓示する」といった使い方をします。
「訓示」は動詞、「訓辞」は名詞なのですが、その理由について漢字の持つ意味から紐解いていきます。
②「訓示」と「訓辞」の漢字の持つ味とは!
「訓示」と「訓辞」、両方に共通している「訓」から。
「訓」とは、「おしえる」「さとす」といった意味があります。
「家訓」や「教訓」の「訓」も、「おしえ」といった意味で使われていますね。
そして「訓示」の「示」とは、「しめす」「あらわす」といった意味があります。
ですから「訓示」は、「おしえさとし、しめす」という意味。
つまり、「しめす」という動詞ですね。
そして「訓辞」の「辞」とは、「言葉」「言語」といった意味があります。
「辞典」や「辞書」の「辞」も、「言葉」といった意味で使われているとおり。
ですから「訓辞」は、「おしえさとす、言葉」という意味になります。
つまり、「言葉」という名詞です。
ということで、もう一度「訓示」と「訓辞」の違いをまとめると、「訓示」は「教え示す」という動詞なので行為のこと、「訓辞」は「教えいましめる言葉」という名詞なので言葉やその内容のことです。
ですから「訓示する」とはいいますが、「訓辞する」とはいいません。
③「訓示」と「訓辞」の具体的な使い方!
では、「訓示」と「訓辞」の具体的な使い分けを例文で説明しますね。
・社長が訓示するぞ。
(社長が演説をする:演説するという動詞なので訓示)
・来年は君が訓示しなくてはいけない。
(君が演説しなくては:演説するという動詞なので訓示)
・訓示が貼り出された。
(書面で示す:示すとうい動詞なので訓示)
・社長から訓辞をいただく。
(社長から言葉をいただく:言葉という名詞なので訓辞)
・これから訓辞を聴かなくてはいけない。
(これから言葉を聴かなくてはいけない:言葉という名詞なので訓辞)
・訓辞を述べる。
(言葉を述べる:言葉という名詞なので訓辞)
2.「挨拶」や「説示」とは?「訓示」「訓辞」との意味の違いは?
「訓示」や「訓辞」と似た意味の言葉で「説示」があります。
「説示」の意味も広辞苑で調べてみますね。
・教えや説などを説き示すこと。また、その文。
「説き示す」という言葉が入っていますが、「説く」とは「相手を納得させるために、物事の道筋・筋道をわかりやすく述べる意。」という意味です。
つまり「説示」とは、「訓示」よりもさらにわかりやすく教えを示すという意味です。
また、「訓示」と「挨拶」の違いもまぎらわしいですよね。
「挨拶」には様々な意味があるのですが、「訓示」と混同しそうなのが、会合などでよくある挨拶ですよね。
「来賓の○○様より、ご挨拶をいただきます。」というやつです。
この場合の「挨拶」は、お祝い気持ちである「祝意」や感謝の気持ちである「謝意」という意味があります。
「訓示」は「教える」行為なのですが、「挨拶」は教えたりはしません。
「祝意」や「謝意」を述べるのが「挨拶」です。
「訓示」や「訓辞」と深い関係性があるのが「指針」や「方針」です。
「指針」と「方針」にも違いがありますよ!
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まとめ
以上が「訓示」と「訓辞」の意味の違いや使い分けなどについてでした。
「くんじする」とか「くんじされる」といった使い方は動詞ですので「訓示」です。
その言葉や内容のことを指すときには名詞なので「訓辞」を使います。
「訓辞する」とは使わないので注意してくださいね。
また、「訓示を述べる」も間違いですよ。
「訓示」「訓辞」「指針」「方針」とつながってくるのが「企画」「計画」です。
「企画」と「計画」の違いについては、下の記事をご覧ください。