「片思い」と「片想い」、両方の使い方を目にします。
どっちかが間違いなの?
それか、「片思い」と「片想い」の使い分けの決まりがあるとか??
それにしても、日本語はこういった言葉が多いですね…。
同じ読み方で、違いがよくわからない言葉。
ということで、今回は「片思い」と「片想い」の意味の違いや使い分けなどについて調べてみました。
1.「片思い」と「片想い」の意味の違いや使い分けは?
①広辞苑による「片思い」と「片想い」の違い!
まずは、広辞苑から調べてみます。
と思ったら、広辞苑には「片思い」だけしか載っていません。
「片想い」はありません…。
・一方からだけ思い慕うこと。片恋。
意味はこのとおり、相手は自分のことを何とも思っていない状況で、自分だけがその相手のことを一方的に恋しく思うことですね。
「片想い」は広辞苑に載っていないのですが、ほかの辞書もやはり載っていません。
パソコンで変換すると出てくる「片想い」が、なぜ広辞苑に載っていないのか?
②常用漢字表に載っているのは「片思い」?「片想い」?
実は、常用漢字表では「想」の読み方は「そう」だけ。
つまり、「思い(おもい)」「思う(おもう)」は常用漢字表にありますが、「想い(おもい)」「想う(おもう)」は常用漢字表にないのです。
ですから、「片想い」「想い」「想う」は公文書で使うことができません。
広辞苑やほかの辞書に「片想い」が載っていないのはそういった理由かもしれません。
ただし、「片想い」は間違いではなく、あくまでも公文書には使えないということです。
③「思」と「想」、漢字の意味や成り立ちは?
では、「思」と「想」の漢字の意味や成り立ちを調べてみます。
「思」は、「田」と「心」が合わさった漢字です。
「田」が上にありますが、これは子供の脳をあらわしています。
そして「心」は、心臓をあらわしています。
つまり、「頭脳」と「心臓」で、「おもう」という意味になりました。
一方の「想」は、「相」と「心」が合わさった漢字です。
「相」は、大地を覆う「木」と、それを見る「目」をあらわしています。
そして「心」は心臓。
つまり、実物の「木(相手のこと)」を「目」で見ながら「心臓」で、「おもう」ということです。
ということで、「思う」と「想う」は同じ「おもう」という意味ですが、その違いはこれ!
「思う」は自分の頭で感じることであるのに対し、「想う」は、相手が存在ししかも相手の姿をイメージするといった違いがあります。
たとえば、「AとB、どちらが正解だとおもう?」といった問いかけに「Aだとおもいます」といった場合は、相手はいませんし相手の姿をイメージしていませんので「思う」を使います。
そして、「クラスのAを、告白も出来ずにただおもい続ける」や「外国で仕事をする息子が元気でいるのか、ただおもい続ける」といった場合は、相手がいるほかに相手の姿をイメージしていますので「想う」を使います。
感情が入るか、入らないのかといった違いもありますね。
「思う」は感情が入らないし、「想う」は感情が入ります。
ですから、相手がいる場合であっても感情抜きで「おもう」場合は「思う」になります。
たとえば、「Aの立場をおもうと…」といった場合は「思う」ですね。
④「片思い」と「片想い」の違い!結論は?
ということで「かたおもい」とは、相手が存在してしかも相手の姿をイメージします。
さらには、「恋心」「愛情」といった感情が存在しますね。
したがって、「かたおもい」は「片想い」と書く方がベター。
ただし「片思い」と「片想い」は、基本的にどちらも意味は同じであり、明確な使い分けの決まりがあるわけではありません。
ですから、どちらを使っても間違いではありません。
しかい、「片想い」は常用漢字表にはなく公文書では使えませんので、そういった場合に限っては「片思い」を使います。
2.「思う」と「想う」の具体的な使い方は?
ではまぎらわしい、「思う」と「想う」の使い分けをご紹介します。
・実家で食べていた米は美味しいと思う。
(美味しいといった自分の考えなので「思う」)
・実家で食べていた米を懐かしく想う。
(故郷の米に対するなつかしいという感情なので「想う」)
・彼は女性として素敵だと思う。
(素敵であるといった自分の考えなので「思う」)
・彼は女性として素敵だし、愛おしく想う。
(愛おしいという自分の感情なので「想う」)
・バレンタインデーに相手に対して想いを伝える。
(相手に対して好きである感情を伝えるので「想い」)
・思いもよらないことが起きてしまった。
(考えていなかった予想外のことの意味なので「思う」)
漢字の違いについて説明しましたが、「風邪をひく」の「ひく」の漢字をご存知ですか?
また、「風邪」は「患う」や「罹る」ではなく「ひく」といいますが、なぜ「ひく」というのか?
「風邪をひく」の語源などについては、下の記事を覗いてみてください。
まとめ
以上が、「片思い」と「片想い」の意味の違いや使い分けなどについてでした。
「片思い」と「片想い」は意味に違いはありませんし、基本的にどちらを使っても間違いではありません。
また、「思う」と「想う」も明確な使い分けの決まりがあるわけでもありません。
「思う」と「想う」は、文章を書く上でその情景に合った使い方をするのがよいと思います。
特に、作詞などでは違いをうまく活用できるのではないでしょうか。
ただし、「片想い」「想う」「想い」は常用漢字表に載っていませんので、公文書では使えないということだけ気を付けましょう。
ところで、似た漢字つながりですが、家などを数える時に「~戸(こ)」や「~軒(けん)」といいますよね。
この「戸」と「軒」の違いについて詳しく解説した記事がありますよ。
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