「辶」をなんと呼びますか?
「しんにょう」か「しんにゅう」か?
自分は学校で「しんにょう」と習いましたので、同級生は全て「しんにょう」と呼びます。
ですが、世代によっては「しんにゅう」という人たちもいます…。
それも、結構多いのですね。
「しんにょう」と「しんにゅう」、いったいどっちが正しいのだろう?
ということで、今回は「しんにょう」と「しんにゅう」の違いや意味について調べてみました。
1.「しんにょう」と「しんにゅう」の違いや意味は?どっちが正しい?
まずは、「しんにょう」と「しんにゅう」の意味を辞書で調べてみます。
之繞。しんにゅう。
【しんにゅう】
之繞。漢字の部首名の一つ。「通」「遊」などの「辶」の部分。しんにょう。
「しんにょう」の意味に「しんにゅう」とあります。
そして、「しんにゅう」の意味に「しんにょう」とあります。
つまり「しんにょう」も「しんにゅう」も、漢字の部首である「辶」の意味で同じですね。
ちなみに、漢字では「之繞」と書きます。
「之」が「辶」で、その「にょう(にゅう)」で「繞」。
之繞が部首の漢字は、「辺」「送」「道」「遠」などたくさんあります。
「之」が「走」になると走繞(そうにょう)で、「超」「越」「赴」などがありますし、「麦」になると麦繞(ばくにょう)で、「麺」「麹」などがあります。
では、「之繞」に戻ります。
「之繞」の「之」は、名前などによく使われる字で、訓読みで「ゆき」と読みます。
そして「之」の音読みは「し」です。
「之繞」の「繞」は、訓読みで「めぐる」、音読みで「にょう」です。
ということは、「之繞」の読み方は「しにょう」が正しいということになります。
「しにょう」が変化して「しんにょう」になったということ。
ですから「辶」は、元々は「しんにょう」です。
元々「しんにょう」がなまって「しんにゅう」という読み方も定着したといった見方が強いようです。
ですが、調べてみますと、江戸時代は「しんにょう」よりも「しんにゅう」の方が主流だったそうです。
それが、明治以降は逆転し「しんにょう」の方が増加したといわれています。
ということで、「しんにょう」と「しんにゅう」はどちらも間違いではありません。
どちらも「辶」のことで「之繞」と書き、「しんにょう」とも「しんにゅう」とも読みます。
ただし、元々の「之繞」の読み方は「しにょう」です。
「しにょう」が「しんにょう」へ。
「しんにょう」が変化して「しんにゅう」となりました。
ちなみに、「繞」は「めぐる」と読みますが、意味もそのとおり「めぐる」「めぐらす」です。
つまり「辶」のように、左上から下へ、そして右側へと「めぐる」ということですね。
2.「辶」のほかに「辶」があるし!違いは何?
「之繞」、つまり「辶」に似た部首で「辶」がありますよね。
パッと見て同じ漢字だと思ってしまうほど似ています。
たとえば「辻」「遡」「迂」といった漢字があります。
「辶」は、「辶」に点が一つ増えて二つになっているので「二点しんにょう」と呼ばれます。
「二点しんにょう」は、なぜか「二点しんにゅう」とはいいません。
不思議ですよね…。
その理由はのちほど。
そして点が一つの「辶」は、「二点しんにょう」と区別する意味で「一点しんにょう」と呼ぶこともあります。
「二点しんにょう」は、明治の時代に広がりました。
中国の清の時代に「二点しんにょう」が正しいとされていた、というのがその理由です。
要するに、明治時代だったから「二点しんにゅう」ではなく「二点しんにょう」なのですね。
前項で説明したとおり、「しんにょう」が広がったのは明治時代だったのです。
これが仮に江戸時代に広がったとするならば、もしかして「二点しんにゅう」だったかも!
そして時代が進みます。
戦後になり日本では教育上のわかりやすさを求めた結果、逆に「一点しんにょう」に変更されたという歴史があります。
ですが、完全に全ての漢字を統一して「一点しんにょう」に変更していればよかったのですが、なぜか「二点しんにょう」の漢字が残されたようです。
ですから、現在は「一点しんにょう」の漢字と「二点しんにょう」の漢字が混在しているのですね。
それにしても、「辶」と「辶」って、間違いますよね…。
似すぎです…。
漢字に関する解説をしてきましたが、似た漢字で「高」と「髙」があります。
この「高」と「髙」について詳しく解説した記事がありますよ。
もしよかったら、下の関連記事をご覧ください。
まとめ
以上が「しんにょう」と「しんにゅう」についてでした。
「辶」は「之繞」と書きます。
「之繞」の元々の読み方は「しにょう」、それが変化して「しんにょう」となりました。
さらに「しんにょう」が「しんにゅう」へと変化したのです。
ですから本来は「しんにょう」です。
ですが、「しんにょう」も「しんにゅう」も間違いではありません。
ところで、「風邪をひく」の「ひく」の漢字をご存知ですか?
また、「風邪」は「患う」や「罹る」ではなく「ひく」といいますが、なぜ「ひく」というのか?
「風邪をひく」の語源などについては、下の記事を覗いてみてください。