「一挙手一投足」というと、「彼の一挙手一投足に注目する」というような使い方をしますよね。
つまり「一つ一つの細かい動き」という使い方です。
もはや世間一般にそういった意味が根付いて、テレビなどでも普通に使われています。
ですが、本来はそういった意味ではないのです!!
ということで、今回は「一挙手一投足」の本来の意味や語源などについて調べてみました。
1.「一挙手一投足」の本来の意味と語源は?
広辞苑で「一挙手一投足(いっきょしゅいっとうそく)」を引くと、二つの意味が載っていました。
①わずかな労力。少しの努力。
②こまかないちいちの動作。一挙一動。
まあ、そもそも遠い昔から伝わった「ことわざ」なのに意味が二種類あること自体おかしなことですよね。
では細かく解説しますね。
①現在の一般的に根付いた「一挙手一投足」の意味!
現在、「一挙手一投足」の意味は広辞苑②の「こまかいいちいちの動作」という意味で使われることが多いいです。
たとえばこんな使い方です。
・足が速い一塁ランナーは、ピッチャーの一挙手一投足に注目し盗塁の機会をうかがいます!
つまり、誰かの「細かい一つ一つの動き」といった意味ですね。
しかも、その「動き」を誰かが「見る」という行為がセットで加わります。
②「一挙手一投足」の語源!
では、「一挙手一投足」の語源を調べてみます。
「一挙手一投足」の語源は、中国の思想家で、政治家、文学者の「韓愈(かんゆ)」の書いた手紙「応科目時与人書」が元になっています。
韓愈が、「官史(かんり)登用試験」、現代でいう国家公務員の採用試験に落ち、その後に知人に対して送った手紙の中に「一挙手一投足」があるのです。
手紙の内容は、かなり長いことから全文は省略しますが、「一挙手一投足」の意味は以下のように使われています。
わずかに一度手を挙げ、わずかに一度足を動かす程度のこと。
たったそれだけの手間でしかないのです。
まさに「わずかな労力」「ほんの少しの努力」という意味で使われているのですね。
③「一挙手一投足」の本来の意味と使い方!
ということで、「一挙手一投足」は「わずかな労力」「ほんの少しの努力」という意味です。
では具体的な使い方を紹介しますね。
・一挙手一投足の労で簡単に成功はつかめない
・たかがそのくらい、一挙手一投足の労にすぎない
といった感じですね。
現在の一般的な意味には「見る」という行為がくっついてきましたが、本来の意味には「労力」や「努力」という行為がくっついてきます。
要するに現在は「行動」で、本来は「労力」、といった違いでしょうか。
間違った解釈、「細かい一つ一つの動作」という意味が定着し、現在は市民権を獲得しました。
辞書にもしっかりと二つの種類の意味が掲載されています。
そのうち、多くの人が間違って解釈している「情けは人の為ならず」も意味が二種類になるかもしれませんね…。
2.「一挙手一投足」と「一挙一動」の違いは?
では「一挙一動」を広辞苑で調べます。
・一つ一つのふるまい。一挙手一投足。
意味の中に「一挙手一投足」がありますし、前項で紹介した、広辞苑の一挙手一投足の意味の中に「一挙一動」があるので、「ひとつひとつの動き」という意味では同じです。
ですが、前項で紹介したとおり「一挙手一投足」には「わずかな労力」「ほんの少しの努力」といった意味もあります。
ですから、「一挙一動」と「一挙手一投足」はどちらを使っても大丈夫なのですが、「一挙手一投足」には「わずかな労力」という意味もあることを覚えておきましょう。
まとめ
以上が、「一挙手一投足」の本来の意味や語源などについてでした。
現在では、「一挙手一投足」は「一挙一動」と同じ「細かい一つ一つの動き」という意味で使われることが多いですが、元々は「わずかな労力。少しの努力。」という意味です。
元々の「一挙手一投足」の意味も覚えておいた方がよいですね。
本来の意味について説明しましたが、日本語にはそういった正しく使われていない言葉がたくさんありますよ。
たとえば「よろしく」の漢字「宜しく」。
実は、この「宜しく」は公文書では使ってはいけませんよ!
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