「職権濫用」と「職権乱用」、「権利濫用」と「権利乱用」、どちらも見る気がする(-_-;)
「濫用」と「乱用」って意味の違いや使い分けはあるのでしょうか。
ということで、今回は「濫用」と「乱用」の意味や違いなどについて調べてみました。
1.「濫用」と「乱用」の意味の違いは?
「濫用」と「乱用」と広辞苑で引いてみたところ、二つは同じ項目になっていました。
みだりに用いること。
つまり、「一定の基準や限度を越えてむやみに使う」という意味なのですが、一緒に載っているということは、「濫用」と「乱用」は同じ意味なのですね。
でも、「濫用」が先に載っていることには意味があるのかな…。
さらに、詳しく調べてみたところ、謎が解けました。
もともと「らんよう」は「濫用」でした。
「乱用」は「濫用」の代替であり、「濫」の字が当用漢字表の削除候補に入ったために「濫」の代わりに「乱」をあてて「乱用」と書くようになったのです。
昭和29年(1954年)に、文部省の諮問機関であります国語審議会にて、「濫」の字が当用漢字表からの削除の候補になりました。
でもこの段階ではあくまでも「候補」ですので、決定したわけではありません。
これをうけて、日本新聞協会は候補段階で正式決定ではなかったのですが、「濫用」の代わりに「乱用」を使用することに決めたのです。
この結果、新聞や放送などでは「濫用」ではなく「乱用」が使用されるようになりました。
代用の「乱」は、ただ単に意味が似ているといった理由で新聞協会が独自に判断したのです。
ただし、「濫」の字は削除候補には入りましたが、この削除候補は正式採用されなかったため、当用漢字表に「濫」の字は残ったのです。
ですから、「濫用」を使っていても何ら問題はなかったのですが、日本新聞協会はそのまま「乱用」を使い続けました。
昭和56年(1981年)には当用漢字表が廃止、そして常用漢字表が採用されたのですが、この常用漢字表にも「濫」の字は入っています。
しかしすでに20年以上も「乱用」を使用したこと、世間にも「乱用」が浸透していたという理由から、新聞や放送では引き続き「乱用」を使用、そのまま現在に至っているというわけです。
なので、現在では、公文書は「濫用」、新聞や放送などは「乱用」を使用するという、奇妙なことになっています。
ということで、「濫用」と「乱用」の違いをまとめますと、どちらも意味は同じでどちらを使用しても間違いではありませんが、歴史を紐解きますと本来の漢字は「濫用」であり、あとから代用の意味で使われだしたのが「乱用」といことになります。
ちなみに、「濫用」と「乱用」同様に、常用漢字と新聞などの表記が異なる漢字はほかにもあります。
「法令遵守」の「じゅんしゅ」なのですが、公文書では「遵守」は新聞や放送などでは「順守」を使用しています。
どちらも意味は変わりません。
漢字表記が違うだけです。
2.「悪用」と「乱用・濫用」の意味の違いは?
「悪用」とは「わるく利用すること。わるい目的に使うこと。(広辞苑より)」です。
つまり、本来の使い方ではなく、悪意を持って悪い目的に用いることが「悪用」ですね。
「濫用・乱用」は「みだりに用いること」。
「みだりに」の部分が少しわかりづらいですが、「みだりに」とは「むやみに、わけもなく、秩序をみだして」という意味です。
悪い目的の有無に関わらず、むやみに・秩序を無視して用いるのが「濫用・乱用」です。
ですから、悪意のある「濫用」もあります。
漢字の違いについて説明しましたが、「鼻をかむ」の「かむ」の漢字をご存知ですか?
また、なぜ「かむ」というのか??「鼻をかむ」の漢字や語源などについて詳しく調べた記事がありますよ!
もしよかったら、下の関連記事をご覧ください。
まとめ
以上が、「濫用」と「乱用」の意味や違いなどについてでした。
「濫用」と「乱用」は漢字が違いますが、全く同じ意味です。
「濫」が当用漢字表から外されるらしいから他の「らん」を探してこなきゃなあ、というときに目についたのが「乱」だったということです。
まあ、「濫」の代わりになる「乱」以外の「らん」というと、他にしっくりくる漢字はないですよね。
「蘭」だとお花だし。
私は「濫」の字は書くのが難しいので、「乱用」と書くことにしようかな。
まぎらわしい漢字の違いといえば、「火」と「炎」…。
「火」と「炎」の違いをご存知ですか?
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