「城址(じょうし)」と「城跡(じょうせき/しろあと)」、意味をご存知ですか?
なんとなく、どちらも「しろあと」で同じ意味のような…。
しかも、仮に同じ意味だとしたらなぜ2種類の言葉が存在するのか!
ということで、今回は「城址」と「城跡」の意味の違いなどについて調べてみました。
1.「城址」と「城跡」の意味の違いと使い分けは?
まずは「城址」と「城跡」の意味を辞書で調べます。
・しろあと。(城趾[じょうし])
【城跡(じょうせき/しろあと)】
・しろあと。城址。
ということで、意味は「しろあと」つまり「かつてお城のあったあと」ということで全く同じということです。
では、同じ意味の言葉でありながら、なぜ「城址」と「城跡」の2種類の言葉があるのか、さらに深堀します。
時代はさかのぼり、昭和21年(1946年)に日常生活で使用する漢字の範囲を定めた1850種類の漢字「当用漢字表」が公布されました。
当用漢字表にない漢字は基本的に使用してはいけなかったのですね。
そして、この当用漢字表に「城址(城趾)」の「址」と「趾」は含まれなかったのです。
そこで「城址」の「址」を、意味も似ており当用漢字表にもある「跡」を代用して「城跡」としたのです。
その後、昭和56年(1981年)に当用漢字表が廃止されて「常用漢字表」が公布されました。
ただし、この常用漢字表にも「址」と「趾」は含まれません。
しかし、当用漢字表にない漢字は「制限」していたことから使用禁止となっていたものが、常用漢字表に変更となり「制限」から「目安」となったことから漢字の使用が解禁されたということです。
ということで、現在では「城址」が復活し、「城址」と「城跡」両方存在することになったのですね。
次に「址」「趾」「跡」の漢字の意味から紐解きます。
・あと。
・建物の土台。
【趾】
・足あと。足どり。
・建物の土台。
【跡】
・足あと。
・あとかた。
「址」「趾」「跡」、すべて「あと」の意味ですので「地面に付いたあしあと」「もともとあったもののあと」といった意味合いですね。
そして「城址(城趾)」の「址」と「趾」には、「建物の土台」という意味がありますので、お城の場合は「土台」や「基礎」、「石垣」などのあとという意味合いが強くなります。
「城址(城趾)」と「城跡」はどちらも同じ意味なのですが、あえて使い分けをするならば、同じ「しろあと」でも石垣が残っている場合には「城址(城趾)」、現在何も残っていない状態で「昔はこの場所に城があった」という場合は土台が残っていませんので「城跡」を使います。
「城址(城趾)」と「城跡」、「しろあと」で意味は同じです。
「当用漢字表」と「常用漢字表」により振り回されて、「城址(城趾)」から「城跡」になったり、また「城址(城趾)」に戻ったりと、ややこしくなってしまったということですね。
2.「城」と「砦」と「宮殿」の意味の違いは?
「城址」と「城跡」を解説しましたので、ついでに「城」や「砦」、「宮殿」についても説明しますね。
「城(しろ)」とは、敵を防ぐために築いた軍事的構造物のことです。
また、城は居住施設も兼ねている場合が多く、日本では将軍や大名らが住んでいました。
「宮殿(きゅうでん)」とは王族やその一族の居住施設です。
基本的には軍事機能は持ち合わせていません。
日本では天皇陛下の居住施設を指し、「皇居」や「御所」と呼びます。
「砦(とりで)」とは要塞や出城のことで、要所の防衛のために作られた軍事基地です。
本城の外に置かれた小規模の城ということです。
攻撃よりは防備に重点が置かれていることが多いです。
砦は、戦いの最中は兵士が寝泊まりしてそこを守りますが、戦いのための施設であることから、普段の快適な生活を送る施設ではありません。
居住施設である「城(本城)」とは違う「出城」なのですね。
ところで、同じ読み方でしかも同じ意味と思われる「目途」と「目処」。
実はこの2つ、読み方が違うってご存知でしたか?
詳しくは、下の記事を覗いてみてください。
まとめ
以上が、「城址」と「城跡」の意味の違いなどについてでした。
「城址(城趾)」と「城跡」は「しろあと」ということで意味は同じです。
「城址(城趾)」と「城跡」は、もともと「城址(城趾)」だったものが「当用漢字表」の公布で「城跡」に代わり、「常用漢字表」の公布で「城址(城趾)」が再び使われるようになりました。
日本語は、意味がまぎらわしい言葉が多いです。
たとえば「修理」と「修繕」、この2つの意味の違いをご存知ですか?
詳しくは、下の記事をご覧ください。