大晦日の夜の番組、「ゆく年くる年」でしたっけ?それとも「いく年くる年」でしたっけ?
ん…、どっちだっけ?
といったように、「行く」を「ゆく」と読んだり書いたりするのは正しいのかどうか迷いますよね。
ということで、今回は「ゆく」と「いく」の違いについて調べてみました。
1.「ゆく」と「いく」の違いと使い分けは?
「ゆく」も「いく」も意味や漢字表記は同じで「行く」「往く」「逝く」と書きます。
万葉集の時代から「ゆく」と「いく」は併用されてきました。
「ゆく」とも「いく」とも書いていたのですね。
また、平安・鎌倉時代には、漢文訓読では「ゆく」を使うことが多く「いく」を使うことはまれだったそうです。
現在は「行く」「往く」「逝く」にふりがなをつけるときは「いく」と書きますが、ひらがな表記をするときや、発音するときには「ゆく」になることも多いです。
ということで、「ゆく」「いく」ともに正しい読みで、間違いではありません。
どちらかといえば、「いく」は話し言葉的で「いくよ。」「いくね。」「いくの?」「いき過ぎ。」といった具合に多用されて、「ゆく」は文章語的といえます。
以下の「ゆく」の例をご覧ください。
【「ゆく」の例】
・消えゆく
・ゆく末(行く末)
・ゆく春
・ゆくゆくは
・移りゆく
・滅びゆく
・暮れゆく
・ゆくえ(行方)
上記の例のとおり、「移りゆく」や「滅びゆく」などは「移りいく」や「滅びいく」とは言いませんよね。
「どういった状況でどちらを使うべきか」「どんな場面で使い分けるか」、といった決まりはありませんが、感覚で臨機応変に使い分けるのがよいと思います。
ただし、どちらを使おうが間違いではありません。
2.「ゆう」と「いう」の場合は?
「言う」のふりがなは「いう」が正しく「ゆう」は間違いです。
発音するときに、「いう」を「ゆう」と発音することがあるため、書くときにも「ゆう」と書いてしまう方が多いのでしょう。
また、「言う」ではなく「云う」の漢字を使うこともありますよね。
「言う」は、言葉を発すること・言葉で表現すること、つまりしゃべったり話したりすることです。
「云う」は、漢字を見るとわかる通り「伝える」が語源です。
なので、人から聞いたことや教えられたことを「云う」や、昔話や伝承、言い伝えなどを「云う」というように使うことが多いですが、「言う」と同じ意味で「云う」を使うこともあります。
3.「行く」と「往く」の違いと使い分けは?
「行く」は移動することで、「止まる」「住む」の対義語が「行く」です。
「往く」では方向がポイントです。
「あっち」や「向こう」に移動することを「往く」といいます。
なので、「往く」の対義語は「来・復」などです。
また、「往く」は往復する際の「いき」の時に使います。
(「いき」と「帰り」の「いき」です。)
ポイントをまとめると、「行く」は移動すること、「往く」は方向性がはっきりしている場合や往復の際の「往」の時に使います。
ちょっと余談ですが「往く」は古い言葉で、昔は「往ぬ(いぬ)」という言葉でした。
高校の古典の授業で出てきたのを覚えている方も多いのでは?
活用を覚えましたよね。
「な、に、ぬ、ぬる、ぬれ、ねよ」?合っているかな。
古典では、「往ぬ」は「行く、行ってしまう」のほかに「去る」や「帰る」「逝去する」という意味もありました。
私が今でも覚えているのは、高校のときの古典の先生が「お前らは田舎者でよかったな。『往ぬ』の意味を改めて覚える必要がない」と言っていたこと。
「往ぬ」は古い言葉ですが、地域によっては現在でも使われています。
私は、「お客さんならもう往んだ(いんだ)よ(=お帰りになったよ)」と言うことがありますね。
また、口喧嘩で祖母に負けた祖父の捨て台詞は「往ね(どっかいけ、あっちいけ)」でした。
このように「往く(往ぬ)」は、移動するというだけでなく、「向こうに・あっちに移動する、離れていく、去る」という意味があります。
まとめ
以上が、「ゆく」と「いく」の違いについてでした。
「行く」や「往く」を「いく」「ゆく」と書くのはどちらも正解ですが、「言う」「云う」を「ゆう」と書くのは間違いです。
気を付けてくださいね。