「着服」と「横領」、どちらも他人のお金やものを自分のものにするというイメージだけど、この二つには違いはあるのでしょうか。
また、「詐欺」や「背任」「窃盗」と「横領」は違うの?
ということで、今回は「着服」と「横領」の違いや「詐欺」「背任」「窃盗」などについて調べてみました。
1.「着服」と「横領」の意味と違いは?
「着服」とは「ごまかしてひそかにわが物とすること。(広辞苑より)」、「横領」とは、「他人または公共のものを不法に奪うこと。(広辞苑より)」です。
どちらも、他人のものをひそかに自分のものにする行為のこと、要はネコババや横取りのことですね。
着服と横領は、行為自体は大体同じです。
あえて違いをあげるとすれば、着服は金品など「身近なもの」をネコババするのに対し、横領は金品以外のもの、たとえば権利や不動産などにも使います。
また、着服は法律用語ではありません(着服罪はない)が、横領は「横領罪」という罪状名があります。
この点に着目すれば、「着服」は行為、着服がばれたときの罪状名が「横領罪」となります。
余談ですが、横領罪には「単純横領罪」と「業務上横領罪」「遺失物等横領罪」があります。
「自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する」
【業務上横領罪(刑法253条)】
「業務上自己の占有する他人の物を横領した者は10年以下の懲役に処する」
【遺失物等横領罪(刑法254条)】
「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する」
なるほど、落とし物をネコババしても、横領罪なんですね。
魔が差さないように気を付けよう。
(※自己の占有とは、自分が支配しているといった意味で、例えば「自己の占有する他人の物」とは、会社から貸し出しされている携帯電話などがあたります。)
2.「詐欺」と「横領」と「背任」と「窃盗」の違いは?
「詐欺罪」とは「相手をだまして他人の財産を奪うこと。」です。
横領罪との違いは「相手をだます行為があったかどうか」です。
最初から第三者に売っ払うつもりで相手の財産の管理を申し出たのなら詐欺罪、最初はきちんと管理していたけれど、自分の借金が膨らんだため財産を売って自分の借金の返済にあてたのなら横領罪です。
詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役です。
「背任罪」とは「事務を委託された上で、自分や第三者の利益を図り、任務に背き、委託主に財産上の損害を与える行為」です。
委託主を裏切るのが背任罪ですね。
業務上横領罪と似ていますが、横領罪では他人(委託主)の財産を自分のものにして初めて成立します。
背任罪はそうでないときにも成立します。
たとえば、社員が売上金(会社の財産)の一部を自分の懐に入れるのは横領ですが、安く卸すなど会社に損害を与える見返りに取引先からリベートを受け取るのは背任罪です。
また、横領罪は特定の財産を横領したかどうかが問われるのに対して、背任罪は利益や財産全体に損害を与えたかどうかが問われます。
背任罪の法定刑は5年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
「窃盗罪」とは「他人のものを横取りすること。」です。
というと、横領罪と同じように聞こえますが、横領罪は「自己の占有する他人のものを横取りすること。」です。
(※自己の占有とは、自分が支配しているといった意味で、例えば「自己の占有する他人の物」とは、会社から貸し出しされている携帯電話などがあたります。)
窃盗罪は他人が占有する他人のものを横取りすることです。
いわゆる泥棒です。
窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
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まとめ
以上が、「着服」と「横領」の違いなどについてでした。
着服も横領も行為自体はほとんど同じですが、捕まるときにはどちらも「横領罪」です。
また、行為によっては背任罪や詐欺罪で捕まることもあります。
泥棒や万引きをしたときは、窃盗罪です。
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