「指名」と「任命」、すごく似た意味のような気がします。
学校では「指名」という言葉はたくさん出てきた記憶がありますが「任命」はあったかな?
でもテレビのニュースをみていると、「任命責任が…」どうのこうのとよく耳にします。
意味の違いといわれても…難しいです…。
ということで、今回は「指名」と「任命」の意味の違いや使い分けなどについて調べてみました。
1.「指名」と「任命」の意味の違いと使い分けは?
まずは、この二つの意味を広辞苑で調べてみました。
・特にこの人と指定すること。なざし。「指名を受ける」「首班を指名する」
【任命】
・官職に任ずること。職務を命ずること。「大使に任命する」
「指名」と「任命」の意味の違いをわかりやすくまとめると、「この人がいいな」「この人にやってもらおう」というのが「指名」、「この役目をあなたに任せた」というのが「任命」です。
会社の人事異動にたとえると、人事部で後任の営業課長を1名に選定するのが「指名」、社長が後任の営業課長に対して辞令交付を行うのが「任命」となります。
この時に交付される辞令には、「営業部・営業課長を命じる」と書いていますが「役職を任せることを、命じる」つまり「任命」です。
指名のやり方は色々で、たとえば数人で話し合い「この人がよいのでは」と決めることもあれば、選挙など多数決で決めることもあります。
一方の任命は、任命される側のその役目に対する意識に影響する重いもので、「辞令」や「任命証書」などがより地位が高い人から手渡されます。
そうすることで、任命を受けた人の責任を全うしようとする意識が高まるのですね。
【日本国憲法における「指名」と「任命」の違い!】
この「指名」と「任命」がよく使われるのが日本国憲法です。
「天皇は、国会の【指名】に基いて、内閣総理大臣を【任命】する。」
「天皇は、内閣の【指名】に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を【任命】する。」
内閣総理大臣は国会で「指名」され、天皇陛下が「任命」することが定められています。
また、最高裁判所長官も内閣の「指名」に基づいて天皇陛下が「任命」します。
つまり、日本では行政と司法のトップは天皇陛下が任命するということです。
ちなみに、立法のトップとなる衆議院議長や参議院議長は天皇陛下の任命ではなく、国会で選出されるといった形式になっています。
天皇陛下に任命された内閣総理大臣は国務大臣を指名し任命します(憲法第68条)。
ここでは天皇陛下は、内閣総理大臣が任命した国務大臣を認証するだけです。
ちなみに「認証」とは、認めて証明するといった意味です。
国務大臣がスキャンダルや不祥事を起こすと内閣総理大臣の任命責任が問われるのはこのためです。
また、下級裁判所の裁判官は最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣が任命します(憲法第80条)。
2.「選任」とは?「指名」「任命」との意味の違いは?
「選任」も広辞苑で調べます。
・ある人をえらんでその任に就かせること。
漢字のとおりなのですが、「選んで、任せる」といった意味ですね。
「任命」と似ているのですが、「任命」と「選任」の違いをまとめると、「任命」は「任せることを、命じる」で選ぶ過程がないのに対し、「選任」は「選んで、任せる」ですので選ぶ過程があるのです。
また、「選任」に「命じるがない」と思うかもしれませんが、「任じる」と「命じる」は辞書では同じ意味となっています。
つまり「選任」とは、「選らぶ=指名」+「任せる=任命」ということで、「指名」と「任命」の両方の意味が含まれているということになります。
また、「選任」は会社法にも出てきます。
会社法の第3節「役員お及び会計監査人の選任及び解任」の中の329条「役員及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。」です。
「選任」された役員が役を解かれることを「解任」といいます。
「就任」と「着任」の違いについては、下の記事をご覧ください!
まとめ
以上が「指名」と「任命」の意味の違いや使い分けなどについてでした。
「指名」は「この人にやってもらおう」「この人がいいな」と選び指定すること、「任命」は「この役目を君に任せる」ということで「任せることを、命じる」という意味です。
日本国憲法では、内閣総理大臣を指名するのは国会ですが、任命するのは天皇陛下です。