「宜しく」と「よろしく」、ビジネスではもちろんプライベートでの挨拶文でも使うことがありますが、そのとき漢字で書くべきか平仮名がよいのか、迷いますよね。
漢字と平仮名!使い分けのルールがあると思ってしまいますが、実は漢字の「宜しく」には意外な秘密が隠されているのです!!
ということで、今回は「宜しく」と「よろしく」の違いと使い分けについて調べてみました。
1.「宜しく」と「よろしく」の違いと使い分けは?ビジネスではどっち?
「宜しく」と「よろしく」は同じ単語、「よろしく」を漢字で書くとしたら「宜しく」です。
ただし、「宜」という漢字は常用漢字表にはあるのですが、読み方は「ギ」だけです。
ですから、漢字の方の「宜しく」、これは常用漢字表にはない読み方ですので公文書では使えません。
そのため、公的な文書は必ず「よろしく」と平仮名で書きます。
ビジネスシーンにおいては、なんとなく「漢字の方が丁寧なのでは?」と思いがちですが「宜しく」ではなく「よろしく」を使いましょう。
ちなみに「宜」の字は「宜しく」以外では「便宜」「適宜」というように使いますよね。
どちらも「適当に、程よく、都合よく」といった意味合いを含んでいます。
つまり「宜しくお願いします」とは、相手に「適当に、程よく、都合よく」してもらうことをお願いしているのです。
実は漢字の「宜しく」とは、そういった意味で生まれた当て字なのですね。
現在は、当たり前のように使われている「宜しく」ですが、「当て字」として生まれた漢字であることを覚えておきましょう。
ですから、使ってはいけないということではありません。
ふさわしいのは、ひらがなの「よろしく」の方、ということ。
ただし、公文書の場合は絶対にひらがなの「よろしく」を使いましょう。
本来正しくない言葉が広がり、市民権を得た言葉はたくさんあります。
たとえば「新しい」、これ「あたらしい」と読みますよね。
ですが、元々は「あらたしい」が正しい読み方で、間違って「あたらしい」と言ってしまったものが広がり、現在は普通に使っています。
下の、関連記事で詳しく説明していますよ。
2.「いたします」と「致します」の違いと使い分けは?
それから、「よろしくお願いいたします」の「いたします」、これも漢字で「致します」と書いているのを見かけますが、この漢字も本来の使い方としてはふさわしくありません。
「お願い」という動詞の後につく補助動詞が「いたします」「いたす」、つまり「する」の丁寧語なのです。
本来「致」の漢字の意味は「めざすところまで届ける」(例:誘致・招致)、「最後まで行き着く。物事の行き着くところ」(例:極致・合致・一致)といった意味があります。
また、「致す」には「よくない結果を引き起こす」や「心を尽くす」といった意味があります。
ですから「お願いいたします」の「いたします」の意味「します」「する」とは違ってくるのです。
「いたします」は「失礼いたします」や「感謝いたします」といった使い方もありますが、平仮名で書きましょう。
漢字か平仮名かを迷った場合は「いたす」「いたします」を「する」「します」に置き換えると間違いません。
ちなみに「不徳の致すところ」は「(自分の)不道徳でよくない結果を引き起こした」という意味であり、漢字の「致す」が正解ですが、「する」「します」に置き換えると言葉がおかしくなってしまいます。
「よろしく」という言葉はよく挨拶文で使いますが、「お喜び」と「お慶び」という言葉も挨拶文で使いますよね。
実はこの「お喜び」と「お慶び」、使い分けが必要であることをご存知でしたか!!
下の記事で詳しく解説していますので、もしよかったら覗いてみてください。
まとめ
以上が、「宜しく」と「よろしく」の違いと使い分けについてでした。
公文書では、常用漢字表にしたがい平仮名の「よろしく」を使います。
ビジネスシーンでも漢字ではなく平仮名の「よろしく」を使いましょう。
また、「よろしくお願いいたします」の「いたします」は平仮名が正解です。
ほかの言葉で「いたします」を漢字か平仮名か迷った場合は、「いたす」「いたします」を「する」「します」に置き換えてみると正解がわかりますよ。
同じように挨拶文でよく使う、「むかえる」という言葉があります。
漢字では「迎える」と「向かえる」がありますが、両者は意味が違うので間違うと大変なことになりますよ!!
詳細については、下の記事をご覧ください。
「本年」と「今年」の使い分けに関しては、下の記事をどうぞ!!