以前、仕事で素晴らしい業績をあげた社員を表彰することになり、表彰式の実施要領を作成していた時のこと。
所属長から決裁をもらうため、表彰理由を「○○氏の業績をしょうさん…」と書こうとして…
「しょうさん」を変換したら、「称賛」と「賞賛」が出てきた!
「称賛」?「賞賛」?どっち…??
辞書を調べたら同じ意味だし…?
「どっちでも意味は同じだ」と思って変換で最初に出た方で決裁を受けることに。
しかし、結局は上司からお叱りを受け…。
やはり、「称賛」と「賞賛」には違いがあったのです!
ということで、今回は「称賛」と「賞賛」の意味の違いや使い分けについて徹底的に解説していきます。
1.「称賛」と「賞賛」の意味の違い!
最初に、「称賛」と「賞賛」の意味の違いについて説明します。
賞賛:物を与えてほめたたえること
言葉でほめたたえるのが「称賛」で、物を与えてほめたたえるのが「賞賛」ですね。
ですから、社員の業績を表彰する場合は表彰状を渡しますので、物を与えることから「賞賛」の方が適していることになります。
また、「彼の業績に称賛の声があがる」といった場合は言葉だけになりますので「称賛」の方がふさわしいということですね。
なぜ、そういった違いがあるのか?
そのポイントはそれぞれの漢字の意味です。
「称賛」と「賞賛」の漢字を分解した「称」「賞」、そして両者に共通する「賛」の漢字の意味は以下のとおり。
称:ほめる・たたえる
賞:ほめる・たたえる・ほうび・たまもの
ということで、両者に共通する「賛」は、「ほめる」「たたえる」という意味があり、「賛美」「自画自賛」といった使い方をします。
「賛美」もほめたたえること、「自賛」は自分のことをほめたたえるという意味ですね。
そして「称賛」の「称」も、「ほめる」「たたえる」という意味があり、「推称」「称揚」といった使い方をします。
「推称」は素晴らしいものをすすめること、「称揚」はほめあげることです。
「賞賛」の「賞」は、「ほめる」「たたえる」という意味の他に「ほうび」「たまもの」といった意味も含んでいます。
ですから、「賞品」「賞金」「懸賞」など物やお金に関係する意味の言葉になります。
つまり、言葉でほめたたえることが「称賛」であり、物を与えてほめたたえることが「賞賛」ということになります。
2.「称賛」と「賞賛」の意味は辞書ではどうなっている?
「称賛」と「賞賛」の違いについてはご理解いただけたかと思います。
今度は、「称賛」と「賞賛」の意味が辞書などではどうなっているのか、調べていきたいと思います。
・ほめたたえること
ということで、「称賛」と「賞賛」は同じ項目で掲載されていますので全く同じ意味ということになります。
そして、意味は「ほめたたえること」ですね。
しかも、辞書などでは「ほめたたえること」だけしか説明がありません。
どのようにして「ほめたたえる」のか、その説明がないのです。
ですから、辞書を調べただけでは使い分けを誤ってしまいます。
気を付けましょう。
前項で解説したとおり、厳密には使い分けが必要なのです。
また、「称賛」も「賞賛」も日常会話ではあまり使わない言葉です。
たとえば、子供が初めて歩いた時に「子供を称賛する」といった使い方はしませんよね。
「親は子供に抱きつき、やさしくほめたたえた」といった使い方が一般的だと思います。
これは、「驚く」ことを「驚嘆」と言わないのと同じです。
また、「悲しみ」を「悲哀」とも言いませんよね。
要するに「称賛」や「賞賛」は、日常的な会話などで使う言葉というよりも、ビジネスなど公的な場面で多く使う言葉なのです。
3.「称賛」と「賞賛」の他に「称讃」と「賞讃」もある!
「称賛」と「賞賛」に似ている字で、「称讃」と「賞讃」という字もあります。
「賛」の字に「ごんべん」が付いて「讃」ですね。
実は「賛」も「讃」も意味は同じ「ほめたたえる」です。
ですから、「称賛」と「称讃」、「賞賛」と「賞讃」はそれぞれ同じ意味なのですね。
ただし、「称讃」や「賞讃」の「ごんべん」の方は常用漢字ではありません。
ですから、公用文には使えません。
同じ意味なので、「讃」が省略されて「賛」になったものと思われるかもしれませんが、違います。
「讃」も「賛」もそれぞれ別の意味の漢字が省略されて出来た漢字です。
それが、なぜか同じ意味で使われるようになったのですね。
そもそも「賛」は、元々は「ほめたたえる」ではなく「たすける」という意味でした。
「賛助会員」や「協賛」といった使い方をしますよね。
それがどういった経緯があるかは不明なのですが、なぜか「賛」も「ほめたたえる」になってしまったのです。
ちなみに、「讃」は最初から「ほめたたえる」でした。
そして、元々は「讃」も「賛」も、「夫」の部分が「先」という字でした。
両者とも「先」が「夫」に省略されたという部分では共通しています。
4.「称賛」と「賞賛」の使い分け!
それでは、「称賛」と「賞賛」の使い分けです。
報道機関などでは、同じ意味の言葉がある場合はどちらかに統一されるケースは多くあります。
ですが、新聞やテレビなどのマスコミでも「称賛」と「賞賛」は両方とも使われています。
ただし、言葉でほめたたえるのが「称賛」で、物を与えてほめたたえるのが「賞賛」、といった使い分けとは限りません。
調べてみたのですが、言葉でほめたたえるケースでも「称賛」と「賞賛」両方使われています。
つまり、ごちゃまぜになっているのですね…。
おそらく、報道機関の中で使い分けのルールが無いのだと思われます。
では、使い分けを例文で紹介します。
【「称賛」の使い方!】
・彼の残した功績を多くの人々が称賛する。
・これだけ多くの実績は称賛に値する。
・長い間のボランティア活動に対して称賛の声があがる。
・称賛の声と羨望の声が入り混じる。
・称賛と敬意とを表された。
【「賞賛」の使い方!】
・彼の業務改善提案を賞賛した表彰式が行われた。
・日本記録を賞賛し、記念トロフィーが贈られた。
・長年の勤務に対する賞賛の証として記念品が贈呈された。
・彼の努力は多くの人のためであり、賞賛されることが目的ではない。
・式典にて賞賛されたことが、ひとつの励みになる。
まとめ
以上が、「称賛」と「賞賛」の意味の違いや使い分けについてでした。
「称賛」は言葉でほめたたえること。
「賞賛」は物を与えてほめたたえることです。
辞書では、「称賛」と「賞賛」は同じ意味になっていますが、厳密には違いがあります。
気をつけてくださいね。